2024年05月23日
訪問看護師の主な役割は医師などと連携して訪問看護サービスの利用者のケアをしていくことです。また、サービス利用者ご本人・ご家族とのコミュニケーションも必須となってきます。
今、訪問看護師の需要が高まってきて、看護師資格を保有されている方のなかには訪問看護という働き方を選択される方も増えてきています。この記事では訪問看護師の役割や仕事内容、1日の流れについて解説。訪問看護業界の現状や職場の選び方についてもご説明します。
―― 厚生労働省のまとめによれば
2.看護師全体の比率でみると、訪問看護師は少ないが
3.なぜ今、訪問看護師なのか
―― 訪問看護師の需要は増え続けている
―― 訪問看護師のなり手も増加中
―― 在宅ケアを望む患者の増加
―― 増えつつある「在宅での看取り」
4.訪問看護師の役割・業務について
―― 訪問看護師は、具体的にどんな仕事をするの?
―― 訪問看護師は、具体的にどんな人を看るの?
―― 訪問看護をするのは看護師だけではない
5.訪問看護師の一日
6.訪問看護師として働くには、どんな職場を選べばいい?
―― 訪問看護セクションのある病院や複合型サービス事業所
訪問看護師とは
訪問看護師は訪問看護サービスの利用者の自宅を訪問して医療行為やケアを実施する看護師のことを指します。主に病院や訪問看護ステーションに所属し、利用者の自宅を定期的に回ります。
医師や病院・看護ステーションのスタッフと連携しながら疾病や障害に応じたケアを実施するほか、健康状態の確認、健康維持や体調改善サポートなど、訪問看護師の役割は非常に幅広いです。
厚生労働省のまとめによれば
出典:「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)資料3」厚生労働省 老健局(令和5年7月24日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001123919.pdf
利用者の家族との関わりも非常に重要となってきます。ご家族としっかりコミュニケーションをとり利用者の状態を把握するとともに、ご家族にもケアの内容について説明して不安を取り除くのも訪問看護師の重要な役割といえます。
看護師全体の比率でみると、訪問看護師は少ない
訪問看護は病院・診療所と訪問看護ステーションが提供している看護サービスで、報酬は患者の自己負担分と医療保険もしくは介護保険によって賄われています。
小児や40歳未満の人、要介護者や要支援者以外の人は医療保険の対象となり病院や診療所がサービスを提供し、利用者は38万人となっています。要介護・要支援者が利用する場合は介護保険から報酬が賄われ、訪問看護ステーションがサービスを提供し、利用者は66.9万人です。訪問看護サービスの利用者は合計100万人以上で、利用者の年代も非常に幅広いのです。
なぜ今、訪問看護師なのか
出典:「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)資料3」厚生労働省 老健局(令和5年7月24日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001123919.pdf
以下の図は厚生労働省が発表している『医療費の動向調査の概算医療費データベース』に基づいて厚生労働省老健局が国内の訪問看護の実施事業所・医療機関数の推移をグラフ化したものです。
これによると平成24年以降訪問介護を行う事業所が急激に増加しており、令和4年度には医療保険の訪問看護を行う訪問看護ステーションの軒数は13,866事業所、介護保険の訪問看護を行う訪問看護ステーションの軒数は12,498事業所となっており、10年ほどで倍以上となりました。
高齢化が進むにつれ訪問看護の需要が高まっており、今後もその傾向は続くと思われます。
訪問看護師の需要は増え続けている
今、日本の医療・介護業界では、なるべく入院する期間を短めに、在宅での療養を中心に必要なケアを実施していくという考え方が主流となっています。自宅でケアを受けられれば病床が空いて、利用者ご本人も住み慣れた自宅で暮らせるようになります。
利用者はおおむね週1~3回のペースで訪問看護サービスを利用しているようです。
訪問看護師のなり手も増加中
前述のとおり訪問看護サービスの利用者は国内に100万人程度います。少子高齢化が進んでおり、入院よりも在宅での療養、入院前後の在宅ケアの重要性が高まってきているなか、今後も訪問看護サービスを必要とする人は増加すると考えられます。
この需要に対応すべく、訪問看護サービスの事業所数もうなぎのぼりで増えてきています。そのため、看護ステーションで働く訪問看護師の需要も非常に高まっているのが現状です。
在宅ケアを望む患者の増加
訪問看護師の需要の高まりにともなって、訪問看護という働き方を選択される看護師の方も増えてきています。日勤のみで働ける事業所が多いため、家庭やプライベートの両立がしやすい点と、利用者やそのご家族と長い付き合いができてやりがいが感じられるという点が訪問看護師として働く魅力です。なお、訪問看護ステーションでもまったく夜勤がないというわけではなく、当番制で夜間対応を行う日を設けている事業所もあります。
増えつつある「在宅での看取り」
従来から「住み慣れた家でケアを受けたい」という利用者やご家族のニーズはありました。しかし、設備や人員がない一般家庭でのケアはなかなか難しかったのが実情です。
近年では医療技術が発展し、在宅看護のノウハウも蓄積されてきたのに加え、国も事業所も在宅看護がしやすい環境づくりを推進してきたこともあり、利用者やご家族のニーズに応じたサービスが提供できる体制が整ってきたのです。
訪問看護師の役割・業務について
在宅看護サービスの普及によって、「最期は住み慣れた家で」という利用者やご家族のニーズに関しても満たせるようになってきました。訪問看護師は利用者の状態に応じて、医師やケアマネージャーとともに在宅での看取りをサポートするケースもあります。ただ身体面のケアをするだけでなく、利用者やそのご家族の大切な時間に立ち会うというのも訪問看護師の重要な役割といえます。
訪問看護師は、具体的にどんな仕事をするの?
訪問看護師の役割は非常に多岐にわたり、主に以下のような仕事があります。
- ・症状や血圧など健康状態の確認
- ・注射、点滴、褥瘡処置などの医療行為(医師の指示による)
- ・服薬管理、酸素療法、たん吸引
- ・栄養管理や排泄管理、住環境の改善、清拭などの介助
- ・健康維持のためのケアやリハビリ
- ・看取り
訪問看護師には医療従事者としての業務の遂行を求められるのはもちろんですが、利用者の生活全般、ご家族の看病や介護をサポートするという役割も果たす必要があります。非常に責任が大きい分、やりがいを感じている看護師も多いです。
訪問看護師は、具体的にどんな人を看るの?
訪問看護というと高齢の利用者が多いというイメージもあるかもしれません。確かに介護保険の対象となる高齢者の利用が多いのも事実ですが、実際には赤ちゃんから小児、青年、中年期の方など、年代は非常に幅広いです。
病気や怪我で療養が必要な方、妊娠中の方、障がいをお持ちの方など、多くの人が在宅看護を必要としており、訪問看護師はそれぞれのニーズに合った看護サービスを提供します。
訪問看護をするのは看護師だけではない
在宅看護の際に利用者の自宅に訪問するのは看護師だけではありません。たとえば保健指導が必要であるなら保健師が、妊娠中の方をケアするのであれば助産師も訪問します。また、ケアやリハビリの内容によっては理学療法士や作業療法士、言語聴覚士なども同行することがあります。
訪問看護師はこうした各分野のプロフェッショナルと連携をとりながら利用者と向き合っていくことが大切です。
訪問看護師の一日
訪問看護師は病院や診療所、訪問看護ステーションに所属しており、利用者の自宅に訪問する前に拠点に立ち寄り朝礼や報告、情報交換などを行います。
だいたい1日4~5軒程度の利用者をまわり、1軒あたり30分から90分くらいで必要なケアを実施します。
なお、自宅から利用者の自宅に直行して、1日のスケジュールがすべて完了したら自宅に帰るという直行直帰型の勤務形態を採用している事業所もあります。
訪問看護師として働くには、どんな職場を選べばいい?
訪問看護の職場は非常に多種多様です。たとえば介護保険の対象となっている施設であれば利用者は高齢の方が多くなり、医療保険の対象施設であれば幅広い年代の利用者のケアを行うため、それぞれ仕事内容も変わってきます。
また、事業所によって看護師やスタッフの年齢構成や雰囲気、職場環境も大きく変わるため、実際に職場見学などで訪問看護師の働き方を見るのが一番です。
医療専門の求人サイト「医療21」では全国の訪問看護師の求人情報が掲載されており、Web病院見学・Web施設見学で職場の雰囲気を見て・感じることもできます。ぜひご自身に合った病院・施設を探してみましょう。
訪問看護セクションのある病院や複合型サービス事業所
安定を求めているなら大病院に付属している訪問看護ステーションがいいかもしれません。業務フローやマニュアルがしっかりと整っていて、待遇や福利厚生も充実しているケースが多いです。
働きやすさを求めるのであれば複合型サービス事業所がいいかもしれません。自宅から近い拠点を選べば通勤が楽になり、柔軟な働き方もできるため家庭やプライベートと仕事との両立もしやすいです。
「医療21」では条件に合わせて病院や訪問看護ステーションを検索することも可能です。ぜひご自身の理想とする働き方を考えながら探してみましょう。
医療21コラム記事監修者
株式会社アドバン
人材採用サポート・Web事業・印刷物制作を中心とする事業を展開する株式会社アドバンを1991年に設立。人材採用サポートの中でも、医療・介護業界に特化する専門求人サイト『医療21』『介護21』を運営。リアルな求人情報を届け、人材紹介ではない”ベストマッチングの場”を提供している。