2023年12月23日
子育て中の看護師の働き方とは? 育児と仕事を両立させる方法
残業や夜勤の多い看護師にとって、子育てと仕事の両立は難しいと感じている方は多いのではないでしょうか。
しかし、看護師には「子育て支援制度の利用」や「働きやすい職場への転職」など、仕事と子育てを両立させながら働く方法はたくさんあります。また、病院側も子育てを応援するために、さまざまな取り組みを行っています。
この記事では、子育て中の看護師が「無理なく働く方法」や「仕事と子育ての両立を支援する制度」「実際に病院で行われている取り組み事例」についてご紹介します。
2.子育て中の看護師が無理なく働く方法
―― 院内保育(託児所)を利用する
―― 学童保育を利用する
―― 家族の理解・協力を得る
―― 夜勤のない勤務形態の職場に転職する
3.子育て中の看護師が働きやすい職場
―― クリニック
―― 訪問看護
―― デイケア、デイサービス
―― 保育園
4.仕事と子育ての両立を目指す看護師が知っておきたい勤務先の対策・制度
―― 超過勤務対策
―― 育児短時間勤務制度
―― 短時間正社員制度
5.子育て中の看護師を応援する病院の取り組み事例
―― 超過勤務対策事例
―― 短時間正社員制度事例
―― 院内保育・病児保育事例
6.子育て後の看護師復帰を応援する行政の支援サービス
7.まとめ
1.出産後も子育てをしながら仕事を続ける看護師は多い
厚生労働省が2014年に発表した資料「看護職員の現状と推移」によると、常勤看護職員の離職率は他職種の女性労働者と比較して最も低い数値となっています。また、別表を見ると、看護職員の中で退職経験のある人の退職理由として最も多かったのは「出産・育児のため」でした。
このことから、看護師は出産・子育てという転機において離職を選択する人は一定数いることが分かりますが、他職種と比較して、子育て中でも仕事をやめずに働き続ける女性が多いことが読み取れます。
また、看護師という職業は社会的な需要が多く多様な働き方が可能な職種です。だからこそ、子育てしながら働くことができるということもいえます。
【出典】:厚生労働省『看護職員の現状と推移』
2.子育て中の看護師が無理なく働く方法
ハードな看護師の仕事と子育てを両立させるには、働き方の工夫が必要です。例えば、子育て支援制度を利用したり、思い切って仕事の環境を変えることも一つの方法です。
ここでは、子育て中の看護師が無理なく働くために利用できる施設や対処法について説明します。
院内保育(託児所)を利用する
仕事と子育ての両立を目指す看護師の強い味方となるのが、乳幼児を預けられる院内保育(託児所)の存在です。院内保育とは、病院内や近隣にある託児所のことで、病院で働くスタッフの子どもを預かる施設です。
仕事をしながらの子育ては、保育園への朝夕の送り迎えはもちろん、子どもが急に熱を出したときなどは、すぐに迎えに行かなければなりません。その点、院内保育(託児所)がある病院で働いていれば安心して働くことができます。
学童保育を利用する
学童保育とは、小学生の放課後の保育を担ってくれる施設のことです。学童保育の運営主体は公立・民間などそれぞれで、利用できる要件や審査基準も違います。一般的に小学生の低学年、シングルマザー、両親がフルタイム勤務の場合は優先されます。
子育て中の看護師の中には学童保育を利用する人は多く、利用価値は高いといえるでしょう。
家族の理解・協力を得る
看護師の仕事と子育てを両立する上で、家族の理解・協力は欠かせません。炊事・洗濯などの家事の分担、子どもの行事への参加など配偶者のサポートは重要です。
また、ご自身の親や配偶者の両親に子どもを見てもらえる場合には、ありがたくお願いしたほうが良いでしょう。子育ての悩みはひとりで抱え込まずに家族と共有することが大切です。
夜勤のない勤務形態の職場に転職する
病院・病棟に勤務する看護師の勤務形態に夜勤はつきものです。2交代・3交代など不規則な勤務は子育て中の看護師にとっては大きな負担になります。
そのため、思い切って夜勤のない職場へ転職するのもひとつの方法です。「入院施設を持たない病院やクリニックへ転職する」「夜勤のないパート勤務を選択する」など、自ら働き方を変えることも視野に入れてみましょう。
3.子育て中の看護師が働きやすい職場
子育て中の看護師にとって、残業や夜勤の多い職場で働くのは現実的に難しくなります。働きやすい勤務形態の職場を選ぶことが、仕事と子育てを両立する上で大切になります。
子育て中の看護師が働きやすい施設をご紹介します。
クリニック
クリニックは診療所とも呼ばれますが、診療は基本的に外来のみです。入院施設を持たないクリニックであれば夜勤はありません。診療日や診療時間は決まっており、平日出勤で残業は少ないのが特徴です。
また、パート(アルバイト)の雇用契約なら出勤数や勤務時間を選べる職場もあります。子育て中の看護師にとっては働きやすいでしょう。ただし、小規模クリニックの場合、人員が少ないため、急な休みが取りづらいというデメリットはあります。
訪問看護
訪問看護は、看護師が病気や障害を持つ方の自宅に訪問し、主治医の指示の下に看護を行います。訪問看護の職場には、土日・祝日休みも多く、基本的に夜勤はありません。
高齢化社会にともない訪問看護ステーションの数は全国で増加しており、そこで働く看護師も増加傾向です。正社員の求人だけでなく、日数や時間を選べる非常勤の募集も多いため、その中から仕事と子育を両立できる転職先を選ぶことができます。
デイケア、デイサービス
デイケアはリハビリに特化した通所の介護保険サービスです。一方、デイサービスは、要介護認定を受けた方の身体・認知機能の維持・向上のための介護保険サービスです。デイケア・デイサービスは介護のイメージが強いですが、看護師も勤務しており、その仕事は利用者の服薬管理やバイタルチェック、生活介助などを行います。
看護師の仕事はどちらも日勤のみで、基本的に夜勤はありません。土日・祝日が休みの勤務形態も多く、残業もほとんどない職場が多くなっています。
保育園
保育園の看護師の仕事は主に園児の健康管理や健診補助、また保育士のサポートを行います。厚生労働省は2013年までに私立保育園に看護師の常駐を義務付けました。そのため、保育園看護師の求人は増えています。
保育園は、園の行事などを除けば基本的に日曜・祝日は休みで、もちろん夜勤はなく残業もほとんどありません。子育て中の看護師にとってはワーク・ライフ・バランスが取りやすい職場といえます。ただし、大規模の保育園でなければ、一つの保育園に看護師は1名という職場が多いため、休みが取りづらいなどのデメリットがあります。
4.仕事と子育ての両立を目指す看護師が知っておきたい勤務先の対策・制度
仕事と子育てを両立するために、子育て中の看護師が知っておきたい対策や制度をご紹介します。勤務先の制度を上手に活用し、子育てとの両立を目指しましょう。
超過勤務対策
2019年4月より施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が設けられました。原則として月45時間、年360時間を時間外労働の上限としています。また、労働時間を把握するために、タイムカードやICカードによる労働時間の管理が義務付けられています。
病院の性質上、時間外労働を完全になくすことは難しいでしょう。しかし、他部署との連携や業務改善により、時間外労働を大幅に削減できたという事例もあります。転職を検討する際には超過勤務対策に積極的に取り組んでいる病院かどうかを見極める必要があるでしょう。
育児短時間勤務制度
育児短時間勤務制度とは、子どもが3歳になるまでの間、1日原則6時間の勤務を常勤扱いとする制度です。改正育児・介護休業法では3歳までとしていますが、最長利用期間は企業によって異なります。
例えば「小学校に就業するまで可能」「卒業以降も利用可能」という企業もあれば利用期間を延長する企業もあります。勤務先の病院や転職先がどのような制度を取っているかを確認してみましょう。
短時間正社員制度
日本看護協会も普及に力を入れている制度です。短時間正社員制度とは、正社員でありながら勤務日数や勤務時間を一般の正社員よりも短くできる制度です。育児短時間勤務制度とは違い、育児以外の理由も適用されます。ただし、利用できる期間の定めはないため、企業によって決められた方針に従うことになります。
5.子育て中の看護師を応援する病院の取り組み事例
日本看護協会では、看護師のワーク・ライフ・バランスの支援を推進しています。この中には、当然ながら子育て中の看護師への支援も含まれます。実際に病院で取り組まれている事例をご紹介しましょう。
下記3例は、(公社)日本看護協会 『看護師のワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック』に記載のものです。
超過勤務対策事例
●J病院の事例(長崎県)
看護補助者との協働や看護職員の業務改善、他部署との連携により、超過勤務時間の大幅な削減に成功。
具体的には、下記を実施。
・病棟巡回メッセンジャー業務やリネン交換等を看護補助者と協働で行う
・外来看護師の病棟応援
・看護記録時間を午前中に確保
・意見交換会の実施
短時間正社員制度事例
●W・U病院の事例(鳥取県)
看護部と人事部が連携して取り組みを行い、2種類の短時間正職員制度を導入。週30時間で時間短縮型(1日6時間)と休日拡充型(週休3日制)があり、職種や年齢、性別、役職を問わず誰でも利用可能。
院内保育・病児保育事例
●S病院の事例(大阪府)
24時間有資格者による院内保育と病児保育を開設。対象は月齢2カ月から未就学児、男性看護師も利用可能。安価な費用で利用でき、師長が連携し合いながらシフトを作成する。
6.子育て後の看護師復帰を応援する行政の支援サービス
子育て中の期間のみに留まらず、子育て後の看護師復帰を応援する行政の支援サービスもあります。厚生労働省の委託事業「仕事と育児カムバック支援サイト」は、産休・育休からの復帰を予定している女性、出産・育児を理由に退職し再就職を目指す女性、働きたいと思っている子育て中の女性を支援しています。
再就職支援やファミリーサポートセンター、保育所、各種セミナーなど、仕事復帰を目指す女性に役立つさまざまな情報を提供しています。育児休業から職場復帰された方の体験談、メールでの相談対応などのコンテンツもあります。
7.まとめ
看護師の仕事と子育てを両立するのは難しく、出産・育児を機に離職する女性は少なくありません。そんな中でも、さまざまな子育て支援制度を利用しながら、看護師として働き続ける女性はたくさんいます。
ハードな看護師の仕事と子育てを両立するには、ひとりで無理をせずに周りに頼ることが大切です。職場の制度や対策、家族の協力を得ながら、無理なく働ける方法を見つけましょう。
医療21コラム記事監修者
株式会社アドバン
人材採用サポート・Web事業・印刷物制作を中心とする事業を展開する株式会社アドバンを1991年に設立。人材採用サポートの中でも、医療・介護業界に特化する専門求人サイト『医療21』『介護21』を運営。リアルな求人情報を届け、人材紹介ではない”ベストマッチングの場”を提供している。