最近の精神科病院は、患者様の意思を尊重しながら地域移行を促進する病院が増えていますよね。神奈川県川崎市にある「武田病院」も、スムーズな地域移行支援に力を注ぐ病院の1つ。多職種チームで患者様が望む地域での暮らしをサポートしていて、近年では倫理的な課題とも真摯に向き合っているそうです。教育や働きやすさも整っていて、精神科未経験者も歓迎しているらしいので、さっそく見学に行って確かめてきます!
- 形 態
- 精神科病院
- 所在地
- 神奈川県川崎市多摩区/登戸駅
- 病床数
- 140床(精神科急性期治療病棟60床、精神療養病棟80床)
玄関
「武田病院」へのアクセスは、JR南武線・小田急線「登戸駅」から徒歩7分。病院までは駅前通りを直進するだけなので、あっという間に到着します。玄関で迎えてくれたのは、入職1年目の看護師さん(写真右)と精神保健福祉士さん(写真左)。便利な立地ですね!「ええ。小田急線快速急行なら、新宿~登戸間は約16分。都心にすぐ出られますし、病院周辺は自然豊かで暮らしやすい街並みですよ」。
廊下
まずは、小堀内看護部長にお会いしました。「看護部では、患者様の気持ちを尊重することを大前提に、症状が落ち着いたら地域に帰る退院支援を細やかに行っています。多職種との連携はもちろんのことですが、看護職もその人の健康な部分に働きかけることを大事にしています。また、2024年の精神保健福祉法の改正に伴い、ケアから生じる倫理的課題について、改めて考える場を設けているんですよ」と、小堀内看護部長。
廊下
「こちらは、私たちが仕事で感じる『倫理的にどうなの?』という疑問や意見を集める目安箱『倫理モヤモヤBOX』です」と、紹介してくれました。「2023年に設置して、寄せられた現場の声を参考に、解決すべき倫理的課題を話し合っています。当院では、精神科患者様の人権や権利擁護について多職種で話し合い、おかしいと思ったことに声をあげられる職場づくりを進めているんです」と、お2人。素晴らしい取り組みですね。
精神科急性期病棟
急性期病棟へ伺うと、カンファレンスが行われていました。「こちらは閉鎖病棟で、休息、薬物療法、リハビリと多面的に働きかけています。隣は解放病棟でストレスケアに取り組んでいます。当院には認知症患者様が少なく、統合失調症や気分障害などの一般的な精神疾患を抱える患者様が中心で、リハビリや地域移行支援にも力を注ぎ、急性期病棟からはもちろん、療養病棟からも退院される方がいらっしゃいます」と、精神保健福祉士さん。
スタッフステーション
案内役の看護師さんは精神科未経験で入職したため、先輩の指導を受ける機会が多いそうです。「入職後は業務に慣れるまで教育担当の先輩が付き、マンツーマンの丁寧なOJTを行ってくれるので、はじめて精神科看護に携わる方でも安心です。私は先日、看護部長の提案で精神科の基礎が学べる外部研修にも参加させてもらえて、とても勉強になりました」と、看護師さん。
廊下
廊下では、看護師さんと看護助手さんが連携していました。「身体介助や生活支援が必要な患者様もいらっしゃる療養病棟には、看護助手を手厚く配置しています。看護助手は介護の資格がある方だけでなく、無資格・未経験者も大歓迎。入職後は看護主任が中心となって成長をサポートしていて、看護助手向けの勉強会も充実させて、チーム医療の一員としての活躍を応援しているんです」と、精神保健福祉士さん。
精神療養病棟
つづいて、子育て中の看護助手のお2人を紹介していただきました。仕事と子育ての両立は順調ですか?「はい。日勤の朝はゆっくり9時スタートで、毎日ほぼ定時に退勤できるので、子どもとの時間を大切にできて嬉しいです。看護部には育児経験者が多く、保育園や学校行事にはなるべく参加できるよう勤務を調整してもらえますし、子どもの急な体調不良によるお休みにも理解を示してもらえるんですよ」と、お2人。
作業療法室
作業療法室に行ってみると、OTの皆さんが迎えてくれました。「OT室では『その人らしい自立した生活』をお手伝いするため、個別的なアプローチに加えて、集団的療法やプログラムも充実させています。特にプログラムは、手工芸・絵画・書道・読書・パソコンなど、約40種類もの活動を用意しているんですよ」と、皆さん。地域移行だけでなく、その後の自立生活や地域定着に向けた支援にも取り組んでいるそうです。
症例発表会の様子
「こちらは、2023年開催した『症例発表会』の写真。年に一度、日頃の研究科活動の発表の場を設けています」と、お2人が写真を見せてくれました。院内研修や勉強会なども開催していますか?「はい。教育委員会が中心となって、疾患や認知療法などの精神科領域に関する研修を開いたり、職員から学びたいテーマを集めて企画したりしています」。キャリア支援として、外部研修参加をサポートする制度もあるとのこと。
精神科デイケア
お次は、併設の精神科デイケアを案内していただきました。利用者様の作品がたくさん飾られていますね。「ええ、デイケアプログラムは、このような趣味的に楽しむものから、心理教育・就労支援・スポーツ活動など幅広いのが特徴。復職を希望する方へのリワーク支援にも対応していて、デイケア・リワークともに病棟からの試験参加を行っています」と、お2人。退院後の支援として、精神科訪問看護も行っているそうです。
病棟
最後は、スタッフの皆さんが集まってくれました。どんな方におすすめの職場ですか?「当院は9時~17時の実働7時間で、有休もしっかり消化できるので、家庭やプライベートを大事にしたい方におすすめです。看護部には経験豊富なベテランスタッフが多く、精神科が未経験の方や育児などでブランクのある方なども手厚くサポートしているので安心してくださいね」と、皆さん。今日はありがとうございました。
帰り道
- ――おつかれさまでした。地域移行支援に取り組む精神科病院、いかがでしたか。
- さまざまなオリジナルの取り組みを導入し、精神科患者様のスムーズな退院を支援していました。精神科急性期治療病棟では3カ月以内の退院、精神療養病棟では時間をかけながら退院に導くサポートを行っていて、精神保健福祉士、作業療法士、公認心理士、看護師や看護助手も患者様の心身のリハビリに取り組んでいるそうです。また、退院後は訪問看護で地域での生活を支えているのだとか。
- ――見学をしていて、印象に残ったことはありましたか?
- 倫理の目安箱として「倫理モヤモヤBOX」を設置し、透明で風通しの良い病院づくりに取り組んでいることです。2024年の精神保健福祉法の改正に伴い、精神科病院における虐待防止に向けた取り組みが一層推進されるようになりましたから、スタッフが抱く問題意識や提案など、幅広い意見を集めているそうですよ。
- ――では、ここはちょっと、というところは?
- 入院患者様の中に認知症を抱える方はあまり多くないため、認知症看護を深めたい方には向いていないかもしれません。統合失調症や気分障害など、一般的な精神疾患を抱える方が中心で、マインドフルネスや認知行動療法の考え方を看護に取り入れていました。
- ――最後に、ここだけの話をひとつお願いします。
- リフレッシュの時間を大切に考えてくれる職場で、連休や有休を積極的に取得OKで、有休消化率約90%、希望休はほぼ100%通るとのことで、旅行の計画を立てたり趣味や習い事を楽しんだりしているスタッフも多いそうで、充実したオフが仕事を頑張るモチベーションにつながっているようです。
地域に開かれた精神科病院で、チーム医療を学びたい方
精神科に興味があり、未経験からチャレンジしたい方